バットマンの活躍を語る上で欠かせない存在がサイドキック(相棒)であるロビンです。
バットマンとともにゴッサムシティに潜む悪と戦い続けています。
しかし、日本人の多くの人がバットマンに触れるであろう映画では、あまり出番がありません。
まともに出演したのはわずか2作ですし、その2作は評判があまり良くないため、ロビンの活躍を観たことがない人も少なからずいることでしょう。
そこで本記事では、ロビンについてご紹介したいと思います。
ロビンの初登場
日本においては、アメコミ作品のキャラクターは映画のヒットで認識されることが多く、どのキャラクターもわりと新しいキャラクターとして認識されがちです。
しかし、実際にはかなり歴史が古く、ドラえもん(1969)や鉄腕アトム(1952)よりも古いキャラクターであることも珍しくありません。
ロビンも例に漏れず、歴史あるキャラクターです。
初登場はなんと1940年4月(Detective Comics #38)です。
ちなみにバットマンは1939年5月(Detective Comics #27)で、かなり早くからバットマンのサイドキックとして働いていることになります。
バットマンが大人であるのに対して、ロビンは子供です。
読者である子供が感情移入しやすいように作られたキャラクターで、その目論見は見事に成功し、雑誌の売り上げを大きく向上させました。
ロビンの人気の高さから、別の雑誌でロビン単独の冒険譚が連載されるほどでした。
ロビンはバットマン関連の多くの作品にレギュラー出演しており、バットマンとのコンビはダイナミック・デュオと呼ばれています。
現在においても(代替わりをしていますが)ロビンはバットマンに欠かせない存在ですし、十代のヒーローを中心としたチーム・ティーンタイタンズに参加するなど、活躍の場を広げています。
ロビンは一人じゃない
古くからバットマンのサイドキックとして活躍しているロビン。
バットマンは基本的にはずっとブルース・ウェイン(別人物がバットマンを務めていた時期もありますが)であるのに対して、ロビンは代替わりをしています。
それぞれ出自が違いますし性格もバラバラで、性別も男だけではありません。
共通しているのはコスチュームやガジェットくらいでしょうか。
そこで歴代のロビンをざっとご紹介したいと思います。
細かく言うとロビンはもっといて、善悪が逆転した世界であるアース3ではオウルマンのサイドキックとしてのタロンだったり、クライシス・オン・インフィニット・アース前のアース2ではディック・グレイソンが大人になってもロビンを続けてたり、いろんなバージョンがあります。
ここでは、これだけ知っておけば十分、と言えるメインストーリーでのロビン+αを紹介します。
初代ロビン:ディック・グレイソン
初代ロビンであるディック・グレイソンは、サーカスのアクロバット一家の一因でした。
両親がアクロバット中にギャングに殺されてしまったディックは孤児となりました。
ディックは両親を殺したギャングを見つけ出し通報しようとしますが、同じく調査をしていたバットマンに止められます。このまま通報しても揉み消されるだけだと。
ディックに過去の自分を見出したバットマンは、ディックに格闘技等のトレーニングを課し、ロビンとして育て上げます。そして、二人で協力してディックの両親を殺したギャングを捕まえることに成功します。
それからディックはブルース・ウェインの養子となり、夜はロビンとしてバットマンとコンビを組みゴッサムシティに蔓延る悪と戦っていきます。
初登場は1940年。
アクロバット一家出身であるため身体能力が優れており、バットマンから仕込まれた格闘術や戦術もマスターしています。
リーダーシップにも優れており、サイドキックを中心とした若い世代のヒーローのチーム「ティーン・タイタンズ」のリーダーにも抜擢されています。
心身ともに成長したディックはバットマンのサイドキックとしての立場に満足せず、半ば喧嘩別れする形でロビンを辞します。
そして、ナイトウイングとして活動を開始します。
二代目ロビン:ジェイソン・トッド
孤児で盗品を売りさばきながら生活していたジェイソン・トッド。
ある日、彼が盗もうとしたのはバットモービルのタイヤでした。
その目論見は失敗し、バットマンに捕らえられて、孤児院に預けられます。
しかし、その孤児院は子供を犯罪に利用するとんでもない施設で、結局、ジェイソンはバットマンが引き取ることになりました。
ディック・グレイソンと同様に、バットマンから格闘術等のトレーニングを受けて、晴れてロビンとして活動を始めます。
初登場は1983年3月。
ジェイソン・トッドのロビンは悲劇的に語られることが多いです。
というのも、ジェイソン・トッドはジョーカーに殺害されてしまうからです。
ジェイソンはジョーカーに捕らえられてしまいます。
ここでジェイソンが生きるか死ぬかを決めるイベントが開かれます。
読者に電話投票で生死を決めさせるという画期的かつ残酷なイベントです。
投票の結果、わずかに死が上回り、ジェイソンはジョーカーに殺されることになったのです。
こうして、ジェイソンは亡くなってしまったのです。
DCコミックスの世界から一度無くなったマルチバース(多元宇宙)が再度導入された際、ジェイソンが死亡しなかった時間軸にズレて魂が戻り、さらに死者を復活させる泉ラザラス・ピットで完全復活を遂げます。
完全復活したジェイソンは、殺害も辞さない凶悪なヒーロー・レッドフードとして活動を始めます。
三代目ロビン:ティム・ドレイク
ジェイソン・トッドの死後、突如バットマンの前に現れたのがティム・ドレイクです。
ジェイソンの死を受け止めきれず、過剰に暴力的な活動をしていたバットマン。
ティムはそのバットマンの前に現れて、ロビンが必要だと主張するのです。しかも、13歳の少年が独力でバットマンとナイトウィングの正体を突き止め、ウェイン邸を訪れて説得にかかったのです。
渋っていたバットマンですが、説得に折れてティムに厳しい修行を課し、三代目ロビンとして認めることとなりました。
他のロビンと比べて探偵スキルが抜きんでた頭脳派です。
類まれな頭脳を活かして、ティーンタイタンズやヤングジャスティスでも頼られる存在でした。
父親にロビンであることがばれて一時的に引退し、恋人のステファニー・ブラウンにロビンを譲るなどしましたが、再びロビンに復帰しました。
しかし、ブルースの息子・ダミアンの登場、ファイナルクライシスでのブルースの生死を巡ってディックとの対立をきっかけに、ロビンを辞しレッドロビンとして活動を開始します。
四代目ロビン:ステファニー・ブラウン
ティム・ドレイクのガールフレンドで、ティムがロビンを辞したときに一時的にロビンとなった女性です。
ステファニー・ブラウンは、クルーマスターというヴィランの娘です。
父の犯行を阻止する過程でティムと出会います。
この時はスポイラーと名前で活動していました。
ティムがロビンを辞めた時、ステファニーがロビンに志願。
バットマンからの訓練を経て、4代目ロビンに就任しました。
しかし、バットマンの指示を聞かずに行動したことからロビンを解雇されます。
バットマンに自分の価値を証明しようと、ステファニーは単独でゴッサムでの犯罪に立ち向かうのですが、逆にギャングの抗争を激化させた上、ブラックマスクに捕まり拷問を受け死亡してしまいます。
後にステファニーの死は偽装であったことが明かされ、彼女は再びスポイラーとして姿を現します。
さらには、バットガールをしていたカサンドラ・カインよりコスチュームを渡されて、4代目バットガールに就任しました。
2011年The New 52でのリランチ後は、バットガールはバーバラ・ゴードンが務めており、ステファニーは再びスポイラーとして活動をしています。
五代目ロビン:ダミアン・ウェイン
ダミアンは、ブルース・ウェインとタリア・アル・グールの間にできた子供です。
ただし、遺伝子操作をされた上で、人工子宮で育っています。
タリアと殺人集団であるリーグ・オブ・アサシンに育てられていたため、若くして卓抜した暗殺技術をマスターしています。それだけでなく、タリアの英才教育により、科学や芸術などにも長けています。
当初は暴力的で積極的に殺人を行い、傲慢で自分本位な性格でしたが、ディックやブルースのサイドキックとして活動していく中で、徐々に落ち着きを見せるようになりました。それでも生意気ではありますが。
ティーンタイタンズにも参加しているだけでなく、スーパーマンの息子スーパーボーイ(ジョナサン・サミュエル・ケント)とスーパーサンズとしても活躍しています。
ダークナイト・リターンズ:キャリー・ケリー
『ダークナイト・リターンズ』でロビンを務めた13歳の少女です。
正史の世界ではないので「〇代目ロビン」と表記はしませんが、有名作品でロビンを務めたこともあり、多くの人の記憶に残るロビンとなっています。
老いたバットマンに救われたことからロビンに憧れ、バットマンを助けるために奔走するキャリー。
ゴッサムを牛耳るミュータント団のリーダーとの直接対決に敗れたバットマンを助けたキャリーは、正式にロビンとして活動を始めることとなりました。
続編の『ダークナイト・ストライクス・アゲイン』ではキャットガール、3作目の『ダークナイト・マスター・レイス』ではバットウーマンとして活躍しています。
映画におけるロビンの登場
映画でロビンを観た記憶がある人は、もしかすると少ないかもしれません。
コミックスでは欠かせない存在であるロビンが、映画となるとあまり出演していないからです。
『バットマン フォーエバー』『バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲』では、ディック・グレイソンがロビンとして登場しています。演じたのは、どちらもクリス・オドネルです。
この2作以降、ロビンはまともに登場していません。
『ダークナイト ライジング』では、ゴッサム市警の若い警官ロビン・ジョン・ブレイクが出演しています。バットマンの活動に理解を示しており、警官としてバットマンを支援していました。
映画のラストでは、警官として悪と戦うことに限界を感じ警察を辞職したロビンは、ブルースからの荷物に記された座標を頼りにバットケイブにたどり着きます。
次のバットマンであることを示唆しており、本作での活躍はロビン的だったと解釈できます。
ただ、やはりサイドキックとしてロビンの活動を行っていた、とするのは難しいかなと思います。
翻訳コミックスで読めるロビンの活躍
ロビンの活躍は、翻訳コミックスで読むことができます。
バットマン作品の多くにロビンが出演しているので当然ではありますが、その中でも特にロビンが活躍していて単独で読んでも問題のない作品を三作ご紹介します。
まずは、『ロビン:イヤーワン』。
アメコミでは「イヤーワン」という言い方がよく使われます。「ヒーローになって一年目の活躍」を描いたものになります。
つまり、本作はロビンの一年目の活躍、ロビンの中でも初代であるディック・グレイソンを描いています。
クラシカルな雰囲気のあるカートゥーンタッチに描かれており、ストーリーもシンプルなので、アメコミ初心者でも読みやすい作品かと思います。
続いて、『バットマン:デス・イン・ザ・ファミリー』。
二代目ロビン:ジェイソン・トッドの死、三代目ロビン:ティム・ドレイクの登場を読むことができる作品です。
80年代の作品なので劇画チックで読みにくさはありますが、バットマンを語る上で欠かせないエピソードなのでぜひとも読んでおきたい作品です。
最後に『ダークナイト・リターンズ』。
キャリー・ケリーの活躍が読めるのはもちろんですが、金字塔的な作品でもありますので読んでおきたいところです。
現在『バットマン:ダークナイト』の名前で、『ダークナイト・リターンズ』、続編『ダークナイト・ストライクス・アゲイン』の二作が収録されているものが販売されています。
『ダークナイト・ストライクス・アゲイン』はDCコミックスのヒーローが多数出演するので初心者はなかなか状況を把握しづらいですし、絵がアーティスティックというかめっちゃ独特です。ほかのヒーロー等も理解していくと、ストーリーがちゃんと把握できておもしろい作品なので、後々チャレンジするとよいと思います。
ほかにも、『バットマン・アンド・サン』から始まるグラント・モリソン・サーガでダミアンの初登場、『ハッシュ』→『アンダー・ザ・レッドフード』→『レッドフード:ロストデイズ』でジェイソン・トッドの復活などを読むことができます。