コミックス感想:鋼鉄の男の苦悩『Superman:For Tomorrow』

『Superman:For Tomorrow』とは

『Superman:For Tomorrow』は、2004年から2005年にかけて連載されました。

ライターはブライアン・アザレロ
翻訳された作品では、ジョーカー、バットマン:ダムド、バットマン:ヨーロッパなどを担当しています。

ペンシラーはジム・リー
圧倒的な筆致で人気を博し、今ではDCコミックスのパブリッシャー兼CCO(Chief Creative Officer)となっています。
翻訳された作品では、スーパーマンアンチェインド、バットマン:ハッシュなどがあります。

ざっくりあらすじ

地球上から100万人が忽然と姿を消した。その中には、バットマンの妻ロイス・レーンもいた。
この消失の原因が中東にある戦時中の国にあると突き止めたスーパーマンは、国を乗っ取ろうとするノックス将軍と対峙する。

ノックス将軍の手下エクースはスーパーマンに追い詰められた挙句、消失装置を起動させてエクース自身とノックス将軍、さらには30万人を消失させてしまう。
スーパーマンは世間とJLAから強く非難されてしまう。

消失装置を手に入れたスーパーマンは自分自身を消失させて真相を掴もうとするのだが……。

感想(ネタバレあり)

スーパーマンの苦悩と無力感が強調されているような作品です。
連載されていた時期的に9.11の影響が色濃いのだと思われます。

ストーリー前半部はスーパーマンが神父に告解する形で展開されます。
上記のざっくりあらすじで書いた出来事について苦悩する姿がつぶさに描かれます。
正義の象徴ともいえるスーパーマンだからこそ失敗と後悔の念が際立つように思います。

スーパーマン自らの消失を巡っては、止めようとするワンダーウーマンとの肉弾戦が描かれます。
ジム・リーの力強い筆致を存分に楽しむことができてよかったです。

消失した人々はメトロピアという場所にいました。
これはスーパーマンが地球人の避難所として創造した世界で、ジョー・エル、ララ、クラーク・ケントを模したロボットが守っています。
クリプトン星のような悲劇に備えて創った世界でしたが、地球そのものの運命を変えるのは自分の役目ではないと感じたスーパーマンは、メトロピアをファントムゾーンの中に入れ、創った記憶も抹消しました。
メトロピアにはゾッド将軍がおり、彼の差し金で消失事件が起きたのでした。

現実にはヒーローがいないことをまざまざと見せつけた9.11。
今またロシアのウクライナ侵攻でそうした思いが再来している人もいるでしょう。
今後も数年おきに同じ思いを持つことでしょう。
その意味で永遠のテーマを扱っている作品だったと言えるかもしれないですね。