コミックス感想:『バットマン:スリージョーカーズ』


バットマン:スリージョーカーズとは

バットマン:スリージョーカーズは2020年6~8月に連載されたリミテッドシリーズです。
独自色の強い意欲的な作品を刊行しているDCブラックレーベルに属しています。

独立作品なのですが、ストーリーライン的にキリングジョーク、デスインザファミリーの精神的続編と言われています。

ざっくりあらすじ

最悪最凶のヴィラン・ジョーカーが三人も存在していることが判明する。
バットマンバットガール、レッドフードの三人は捜査を開始する。

道化師、犯罪者、コメディアンの三人のジョーカーが張り巡らせた罠に、バットマン達のトラウマがえぐられていく。

ジョーカー達にどう立ち向かうのか。ジョーカー達の目的は何か。

 

感想(ネタバレあり)

ジョーカーが三人いるという衝撃的な設定とは裏腹に、実際は被害者たちの心の葛藤を描いた作品になっています。
派手でカオスなストーリーを期待している人には合わないかもしれない。

バットマンは幼少期にジョー・チルにより両親を目の前で銃殺され、バットガールはキリングジョークでジョーカーに撃たれ半身不随となり、レッドフードはデスインザファミリーでジョーカーに殺された体験を持っています。
そのトラウマに対し各自どうにか受け止めてヒーロー活動に勤しんでいるわけですが、許容量も違いますし受け止め方も違います。

本作でバットマン達は加害者と直接対峙することとなります。
三人のジョーカーにより自らのトラウマと向き合わざるを得ないのです。
バットマンバットガールは周囲の支えもありトラウマと正面から対峙できていますが、死んでいたレッドフードはサポートもなく復活したため、まだ弱さを抱えています。それゆえレッドフードは怒りに任せて行動してしまいます。
レッドフードに対しバットガール咎めバットマンは説得と謝罪を行い、ここでも対応が分かれます。
一口に被害者と言っても三者三様であり、それぞれの受け止め方も違うのです。

過去とどう向き合い、罪を赦し、新たな一歩を踏み出すのか。
赦しというキリスト教に顕著な価値観が色濃く出ている作品のように思います。

単独で読める作品でもありますが、バットマン達側のそれぞれの悲劇、ジョーカーの一般的なオリジンがわかっていた方が本作をより深く味わえるかなと思いました。





コミックス感想:『The Dark Knight Returns: The Last Crusade』


『The Dark Knight Returns: The Last Crusade』とは

2016年6月に出版された作品で、ダークナイトリターンズの前日譚。
悲劇の二代目ロビン:ジェイソン・トッドの死を掘り下げたストーリー。
翻訳はされていません。

ざっくりあらすじ

ヴィラン達との戦いの中で、バットマンの身体も精神も限界に近付いている。
しかし、能力は高いもののまだ精神的に未熟で過度に暴力的な二代目ロビン(ジェイソン・トッド)に任せきることはできない。

ロビンはバットマンの方針に不満を持つ。
暴走したロビンは単身ジョーカーを追う。

 

感想(ネタバレあり)

ざっくりあらすじですべてストーリーを言ってしまっているようなもので、展開を楽しむような作品ではないかなと思います。だって、ジェイソンがジョーカーに殺害されるという結論はわかっているわけですから。

その結論に向けて、どういった過程があったのかに焦点を当てたハードボイルドタッチのストーリーです。
もっと詳細に描かれても良い気がしますが、わりと短めで簡潔でした。

限界寸前のバットマン、あふれ出る暴力性を抑えきれないロビン、虎視眈々と状況を見守るジョーカー。
悲劇へのピースが揃い始め、結末へとそろりそろりと近づいていきます。

本作は、追うロビン、待ち受けるジョーカーの場面で終了します。
ロビンとジョーカーの邂逅までは描かれません。それがまた良い味出してますね。

コミックス感想:『ワンダーウーマン:戦禍を呼ぶ者』


ワンダーウーマン:戦禍を呼ぶ者』とは

ワンダーウーマン:戦禍を呼ぶ者』は、2019年11月に発売されたワンショット作品です。
原書のタイトルは「Wonder Woman: Warbringer」。

「DC Graphic Novels for Young Adults」というレーベルから出版されており、対象がティーンとなっています。

ざっくりあらすじ

アマゾン族の王女ダイアナ(ワンダーウーマン)は、自分の力を周囲に認めさせようと躍起になっていた。しかし、その途中、海上で爆発した船を見つけ、アリアという少女を救い出した。
アリアを元の世界に戻すため、ダイアナはアマゾン族の規則を破り、アリアと共に島を出て行った。

その過程で、アリアがただの少女ではないことがわかる。
彼女はトロイアヘレネの子孫であり、戦禍を呼ぶウォーブリンガーであった。
次々と巻き起こる諍いや戦いにダイアナが立ち向かう。

感想(ネタバレあり)

ジュブナイル物なので、ダイアナの心の成長に焦点を当てている感じ。
そのためか、冒頭のセミスキラでは他のアマゾン族との関わり合いがいつになく不安そうで、自信なさげな少女として描かれていました。冒険を通して徐々にみんなの知っているワンダーウーマンへと成長していきます。

成長前のダイアナが非常に新鮮。
くよくよしっぱなしなダイアナは珍しいように思いました。

一人の少女の血筋が戦禍を巻き起こすという凄まじいストーリーではありますが、全体的に爽やかさがあって読後感も良いです。
子供でも安心して読めますし、DCコミックスに慣れ親しんでいない人にもおすすめできる作品でした。

 

 

コミックス感想:『バットマン:インポスター』


バットマン:インポスターとは

バットマン:インポスター』は2021年10~12月に連載されたミニシリーズです。
映画『ザ・バットマン』の公開前の2022年2月に単行本が世界同時発売されました。

ザ・バットマンの原作ではありませんが、世界観がかなり近いものとなっています。
また、ゴードンが警察を去っているなど、正史のバットマンとは違った設定です。

ざっくりあらすじ

ブルース・ウェインバットマンとして活動を始める。
バットマンの存在は広く知られ、犯罪者たちはその影に怯えるようになった。
一方で裏社会の権力者はバットマンを恨み、その正体を探り始める。

そんな中、ブルースのあずかり知らないところで第二のバットマンが出没し、犯罪者を躊躇なく殺し始める。
ゴッサム市警はバットマン逮捕に向け動き出す。

ブルースは偽のバットマンを見つけ出し、汚名を晴らすことができるのか。

感想(ネタバレあり)

通常よりもリアルな描写、展開で描かれるバットマン


映画『ザ・バットマン』同様、ビジランテとして活動を始めたばかりで、犯罪者と荒々しく戦い、ミスも多く満身創痍。本作では精神科医であるレスリー・トンプキンスに支えられながらバットマンとして活動を続けます。


また、他ではなかなか見ない色恋操作までしており、なりふり構わず犯罪と立ち向かっています。

活動の浅いバットマンの心情を中心に描いています。
そのためか、偽バットマンの正体といった展開の驚きはやや少なめ。登場人物少なめだからしょうがないね。

活動の浅いバットマンを描くといった点では、バットマン:アースワンもありますね。アースワンはアルフレッドと二人三脚で犯罪に挑んでます。
インポスターが好きな人はアースワンも好きになれそう。アースワンvol1は翻訳もあります。



 

コミックス感想:『Luthor』

『Luthor』とは

Luthorは2005年3~9月に連載されたミニシリーズです。
スーパーマンヴィランであるレックス・ルーサーを主人公としています。

なぜルーサーはスーパーマンを受け入れず敵視しているのか、その動機を中心に描かれます。

ざっくりあらすじ

ルーサーは疑問に思う。
人々はなぜ目からのビームを出して犯罪者と戦う男スーパーマンに恐怖を覚えないのか。人間の形をしているだけのエイリアンにメトロポリスの平和を任せられるのか。

スーパーマンに危機感を募らせるルーサーは行動に出る。
ロシアの科学者を半ば強引に招き入れ、メトロポリスの守護神を創り出す研究に力を入れる。
守護神の名はホープ

ウェインエンタープライズの技術協力も取り付けて、いよいよホープは日の目を見ることとなる。
ルーサーが生み出した新たなヒーロー・ホープは瞬く間に市民の指示を得ていく。しかし。。。

 

感想(ネタバレあり)

リアリスティックな描写でレックス・ルーサーの内面に迫る作品。
スーパーマンを人類の一員としてみなさず、人類を見下す半神半人として考えるルーサー。彼なりに思い悩み、スーパーマンに取って代わるため、人類を救うために行動に出ています。

ルーサーによって生み出された女性ヒーロー・ホープ
ホープはアンドロイドでしたが、そのことを彼女自身は知りませんでした。
スーパーマンとの戦いの中で負傷し、自分の身体が機械であることを知り、ひどく戸惑います。

彼女よりも戸惑っていたのは、ルーサーでしょう。
ルーサーはホープがアンドロイドであることを世間に知られたくない。スーパーマンに代わるニューヒーローが作られた機械ではいけないと考えている様子。また、ルーサーとホープは心から交流を深めている様子も描かれています。
ルーサーは決断をしなければなりません。ホープがアンドロイドであることを隠蔽しなければならない。葛藤しながらも起爆ボタンを押し、ホープを爆破するのでした。

スーパーマンヴィランとして最も有名なレックス・ルーサーを丹念に描いた良作でした。

 

 

コミックス感想:『The Oracle Code_』


The Oracle Codeとは

The Oracle Codeは、2020年3月に発売された作品です。
DC Graphic Novels for Young Adultsというティーン向けレーベルから出版されています。

ジョーカーに銃撃されて下半身不随となった直後のバーバラ・ゴードンが主人公です。

ざっくりあらすじ

ジョーカーに銃撃されて下半身不随となったバーバラ・ゴードンは、アーカム自立センターに入所することとなります。
そこには身体や精神のリハビリを受ける十代の若者たちが多数入所していました。

車椅子生活のバーバラは、なかなか施設に馴染めずフラストレーションを溜める日々。
そんな中でも他の入所と少しずつ仲良くなっていくのですが、ある女の子が不思議な物語をバーバラに話します。現実のような、童話のような不思議なストーリーをいくつか話した後、その女の子は忽然と姿を消してしまいます。

バーバラは培ったハッキング能力等を用いて、彼女の捜索に乗り出す。

感想(ネタバレ)

入所させられた施設が何やら怪しい雰囲気で、バーバラを始めとしたティーンたちが勇気を振り絞って、真相に迫っていくお話。

真相そのものは驚くべきものではなくよくあるなあって感じですが、ジュブナイル物らしいストーリー展開で安心して楽しめる感じ。
葛藤を乗り越えて前を向けるようになるエピローグは読後感も良かったです。

コミックス感想:『Harley's Little Black Book』

Harley's Little Black Bookとは

Harley's Little Black Bookは、2016年から2017年にかけて連載されたミニシリーズです。
2017年12月には翻訳版も発売されています。

1話完結で、さまざまなヒーロー達と絡みながらハーレイクインがハチャメチャに暴れ回るコミカルな作品です。

1話完結の話ではありますが、New52のHarley Quinnを読んでおくと登場人物もわかりやすいかと思います。

感想(ネタバレあり)

ワンダーウーマンやザターナ、グリーンランタン、スーパーマン、ロボ、ボムシェルズ(第二次世界大戦時を舞台にリデザインされたDCコミックスの女性キャラ達が活躍するシリーズ)といった面々を相手に、ハーレイクインが暴れ回ります。

憧れのワンダーウーマンを昏睡させて衣装を奪い変装したり、ネットオークションで競り落としたパワーリングを付けて暴走したり、不時着した惑星でロボとサバイバル生活をしたり。

ヒーローの活躍を描くことが多いDCコミックスの中で、ハーレイクインが主人公のシリーズはアメリカらしいコメディが展開されていますが、こちらもハチャメチャで楽しめました。

台詞回しがかなり俗語っぽくて、原書で読むのにかなり苦労しました。きっと見逃しているポイントも多々ありそう。
翻訳版があるのでそちらで読んだ方が無難かなあ。